【末梢神経障害|精神・神経の後遺障害認定】

身体部位の障害としては評価されない障害

脳・脊髄以外の末梢神経の障害の内容と等級認定についてまとめました。

 

失明や手足の麻痺などが含まれないことに注意してください。

 

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交通事故損害における末梢神経障害とは?

末梢神経とは、脳と脊髄からなる中枢神経以外の神経です。

 

例えば脳から直接出ている脳神経のひとつである視神経がそうです。

 

あるいは腕・手・手指などを支配している正中神経や尺骨神経などもそうです。

 

しかし、ここで注意が必要です。

 

視神経がダメージを受けて失明したら、医学的には末梢神経障害ですが、交通事故損害の世界では目の障害として等級認定されます。

 

正中神経や尺骨神経の障害で腕・手・手指に障害が出た時も、末梢神経障害ではなく、腕・手・手指の障害として等級認定されます。

 

末梢神経障害に係る等級の認定は、原則として損傷を受けた神経が支配する身体各部の障害として等級認定するルールになっているのです。

 

だから、そういうものは交通事故損害上は末梢神経障害ではありません。

 

では、末梢神経障害とはいったい何なのか?

 

それは「末梢神経の損傷が原因で起こる障害のうち、身体部位の障害としては独立して評価されないもの」ということになります。

 

もっとも典型的な例は、むち打ち症に伴う様々な神経症状です。

 

末梢神経の分類

 

神経の分類
中枢神経 脳(大脳・小脳・脳幹)と脊髄のこと
末梢神経 体性神経 脳神経

 脳と末梢を連絡する12対の神経。視神経や顔面神経など。

 脊髄神経

 脊髄と末梢を連絡する神経。
 頸神経(8対)、胸神経(12対)、腰神経(5対)、仙骨神経(5対)、尾骨神経1対の合計31対。

 自律神経

 個体の生命維持に関係する循環・呼吸・消化・分泌・生殖などを司る神経
 活発化を担う交感神経とリラックスを担う副交感神経がある

 

体性神経は感覚や随意運動を担い、動物神経とも呼ばれます。

 

自律神経は随意にコントロールできず、意識されることもなく生命活動を支えているので、植物神経とも呼ばれます。

 

興奮伝導の方向による神経繊維の分類
求心性神経繊維 末梢からの刺激を中枢に導く。知覚神経ともいう。そのうちの一部(視覚・聴覚等)が感覚神経とも呼ばれる。
遠心性神経繊維 中枢からの興奮を筋と腺に伝える。筋に伝えるものを運動神経、腺に伝えるものを分泌神経という。

 

神経は2種の神経線維が混在してできています。

 

末梢神経障害の症状

末梢神経には運動神経、知覚神経、自律神経が含まれているため、末梢神経が障害されると、運動麻痺・感覚障害・自律神経障害の症状が現れます。

 

運動麻痺
  • 中枢性(脳・脊髄の損傷)の麻痺の場合、筋緊張や腱反射の亢進はあるが、筋委縮はない。
  • 末梢神経性の場合、損傷部以遠の支配筋に生じ、筋緊張の低下、反射の減弱・消失、筋委縮といった真逆の障害が発生する。
感覚障害
  • 脳性のものは半身に、脊髄性のものは身体の上に帯状に麻痺部位が現れやすい。
  • 末梢神経性の感覚障害は、損傷した神経が支配する部位の皮膚に現れる。
  • 完全な神経断裂では感覚脱失、痛覚脱失が、不完全な障害(絞扼神経障害など)では感覚鈍麻、痛覚鈍麻などが現われる。
自律神経障害
  • 発汗障害: 汗腺からの発汗が阻害され、皮膚が乾燥する。
  • 血管運動障害: 急性期には欠陥が拡張して顔面紅潮と体温上昇、慢性期には顔面蒼白で体温低下。
  • 栄養障害: 皮膚萎縮、皮下脂肪組織萎縮、結合組織萎縮、爪萎縮、骨萎縮などが発生。

 

末梢神経障害の認定基準

 

等級

認定基準

12級13号

局部に頑固な神経症状を残すもの

14級9号

局部に神経症状を残すもの

 

非常に抽象的な定義になっていますが、実務的には「他覚的な証拠があれば12級、証拠はなくとも医学的に説明可能なら14級」みたいな考え方で判断されることが多いようです。

 

認定上の争点になりやすい問題

12級と14級の違いの解釈について、被害者と保険会社で温度差が見られます。

 

被害者は「医師の判断に左右される所見でもあれば12級、起こってもおかしくないことなら14級」のように考えがちです。

 

しかし保険会社は「他覚的所見は等級認定の大前提で、なければそもそも認定対象外。12級認定にはよりしっかりした証拠が必要」というように考えます。

 

因果関係が問われる時のポイントは、「身体の異常(例えばヘルニア)は事故が原因で発生したのか?」と、「その身体の異常が神経症状の原因なのか?」という2点です。

 

頸部ヘルニアや脊柱管狭窄症といった既往疾患がある場合や中高年で加齢による変化が予想される場合も、因果関係は問われやすいです。

 

関係する神経学的検査

常連のX線、CT、MRIなどの画像診断、脳波検査以外に下記の検査が裁判で取り上げられたことがあります。

 

頸椎 ジャクソンテスト、スパーリングテスト、イートンテスト
胸郭出口症候群 アドソンテスト、ライトテスト、エデンテスト、モーレイテスト、ルーステスト
腰椎 下肢伸展拳上テスト、ラセーグテスト、プラガードテスト、大腿神経伸長テスト
反射

腱反射、深部腱反射、筋伸長反射、表在反射(腹壁、腹皮、挙睾筋、臀部、足底、肛門)、
病的反射(上肢:ホフマン反射・トレムナー反射・ワルテンベルク反射、下肢:バビンスキー反射・チャドック反射・シェーファー反射)

徒手筋力テスト 個々の筋力の6段階評価
その他 チネル兆候、フロマン兆候、クローヌス、ケルニッヒ兆候、筋電図検査、神経伝導速度検査

 

むち打ち損傷について

交通事故の末梢神経障害は、むち打ち症に関するものが多いので、むち打ち症について補足しておきます。

 

むち打ち症とは「非接触性の急激な加速減速による頭頚部の外傷」ですが、広く認められた定義はありません。

 

外傷性頸部症候群、外傷性頭頚部症候群、頚椎捻挫、外傷性頸椎捻挫、頸部挫傷、むち打ち損傷、むち打ち関連障害、むち打ち症候群など、多彩な診断名が与えられます。

 

しかし、それらはだいたい同じものを指しています。

 

大部分は1カ月以内、重症でも3カ月で普通の生活に戻れ、1年以内に症状が完全に消失することが多いです。

 

しかし、椎間板損傷、神経根症状、バレ・リュー症状、脊髄症状が出た場合は、後遺障害が残る可能性があると言われています。

 

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