【口の障害|部位別の後遺障害認定】

咀嚼・言語・歯牙の障害

口の後遺障害についてまとめました。

 

  • 口の構造の基礎知識
  • 口に関する後遺障害等級表
  • 用語の定義と等級認定ルール
  • 認定上の争点になりやすい問題
  • 口の検査一覧

 

口の構造の基礎知識

交通事故の裁判では、医学的な問題が法学的な問題・事故の物理的な問題とミックスで議論されます。

 

口の障害であれば、口腔・舌・歯牙などの構造や脳とのつながりに関する知識などが前提とされます。

 

ここでも簡単に押さえておきましょう。

 

口腔の構造

【口腔の構造】

 

口腔は、消化管の起始部で、食物の咀嚼、嚥下、言語の構音などの機能を持ちます。

 

口腔の上壁の口蓋は、鼻腔と口腔の隔壁で、外側の硬口蓋と内側の軟口蓋に分けられます。

 

口腔の壁はすべて粘膜で覆われています。

 

唾液は口中の粘膜に散在する小唾液腺と大唾液腺(耳下腺・顎下腺・舌下線)から分泌されます。

 

上顎歯槽と下顎歯槽には歯が並び生えています。

 

舌は口腔底にある筋肉塊で、先の方から舌突・舌体・舌根に3区分されます。

 

舌は、味覚を司るほか、咀嚼や嚥下を助け、発声器の一部として重要な役割を果たします。

 

味覚の受容器である味蕾は、主に乳頭(舌を覆う細かい突起)についていますが、一部は軟口蓋にもあります。

 

口腔の神経は、運動神経・知覚神経・味覚神経の3種類があります。

 

口に関する後遺障害等級表

 

咀嚼および言語の機能障害
 障害の程度 等級
 咀嚼および言語の機能を廃したもの第1級2号
 咀嚼または言語の機能を廃したもの第3級2号
 咀嚼および言語の機能に著しい障害を残すもの第4級2号
 咀嚼または言語の機能に著しい障害を残すもの第6級2号
 咀嚼および言語の機能に障害を残すもの第9級6号
 咀嚼または言語の機能に障害を残すもの第10級3号

 

歯牙の障害
 障害の程度 等級
 14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの第10級4号
 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの第11級4号
 7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの第12級3号
 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの第13級5号
 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの第14級2号

 

用語の定義と等級認定ルール

 

咀嚼機能の定義

表現

定義

咀嚼機能を廃したもの 流動食以外は摂取出来ない状態
咀嚼機能に著しい障害を残すもの 粥食またはこれに準じる程度の飲食物以外は摂取出来ない状態
咀嚼機能に障害を残すもの 固形食物の中に咀嚼ができないものがあること、または咀嚼が十分できないものがあり、そのことが医学的に確認できる場合。(※)

※ごはんや煮魚は咀嚼できるが、たくあんやピーナッツは無理な場合など。

 

開口障害等を原因として咀嚼に長時間を要する場合は、12等級相当として扱う。

 

舌の異常等による嚥下障害

舌の異常、咽頭支配神経の麻痺等によって生ずる嚥下障害については、下記のような相当等級を認定する。

 

障害の内容

等級

嚥下の機能を廃したもの

3級相当

嚥下の機能に著しい障害を残すもの

6級相当

嚥下の機能に障害を残すもの

10級相当

 

味覚障害

味覚障害の区分

定義

等級

味覚脱失

濾紙ディスク法による最高濃度液の検査で、基本4味質(甘味・塩味・酸味・苦味)がすべて認知できない

12級相当

味覚減退

基本4味質のうち、1味質以上を認知できない

 

14級相当

 

味覚障害は時間経過とともに回復することが多いので、等級の認定は原則として症状固定から6カ月経過後に行います。

 

言語の機能障害

表現

定義

言語の機能を廃したもの 4種の語音のうち、3種以上が発音不能のもの
言語の機能に著しい障害を残すもの 4種の語音のうち、2種の発音不能のものまたは綴音機能に障害があるため、言語の身を用いては意思を疎通することができないもの

言語の機能に障害を残すもの

4種の語音のうち、1種が発音不能のもの

 

以上のほか、著しいかすれ声(嗄声)は12級相当とされます。

 

【4種の語音】
語音は母音と子音に分けられ、子音は発音のメカニズムにより下記の4種に分けられます。

 

口唇音 ま行の音、ぱ行の音、ば行の音、わ行の音、ふ
歯舌音 な行の音、た行の音、だ行の音、ら行の音、さ行の音、しゅ、し、ざ行の音、じゅ
口蓋音 か行の音、が行の音、や行の音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん
咽頭音 は行の音

 

歯牙障害

「歯科補綴を加えたもの」とは、喪失・抜歯・歯冠部の大部分の欠損の場合を指します。

 

これに該当すれば、未補綴でも算入されます。

 

該当しない少しの補綴なら、まず認定されません。

 

歯牙障害で必ずと言っていいほど問題になるのが「加重障害」です。

 

多くの人は事故に遭う前から一部の歯が補綴済みですが、それをどうカウントするのかということです。

 

例えば、既存障害4歯に加え、事故で3歯に補綴を加えた場合、合計7歯なので12等級に認定しますが、既存障害の14級の分の保険金を差し引きます。

 

認定上の争点になりやすい問題

口の障害は、後遺障害の認定自体が問題になることは少なく、労働能力喪失の有無が争われることが多いです。

 

口の検査一覧

 

濾紙ディスク法

標準的な味覚検査で、被検査者の申告による自覚的検査法です。

 

下記4種の味質について5段階の濃度の液を用意し、これに浸した濾紙片を舌に置き、味を感じるか検査します。

 

  • 甘味(S)−ブドウ糖液
  • 塩味(N)−食塩水
  • 酸味(T)−酒石酸
  • 苦味(Q)−塩酸キニーネ

 

電気味覚検査

電流を舌に流すと金属味がすることを応用した自覚的検査です。

 

電極を舌や軟口蓋に当てて味を感じるか調べます。