【高次脳機能障害|精神・神経の後遺障害認定】

器質性の幅広い精神症状

高次脳機能障害の内容や等級認定基準について説明します。

 

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高次脳機能障害とは?

器質性、つまり脳の損傷を原因とする幅広い精神症状です。

 

高次脳機能障害の症状
注意障害 物事に集中できない。持続力の低下。ぼーっとしている。周囲の状況に気づかない。
記憶障害 事故以前のことが思い出せない。事故後に新たに覚えることが苦手になった。
遂行機能障害 物事の段取りが悪い。事態の変化に臨機応変な対応ができない。
社会的行動障害 意欲の低下。感情が制御できない。対人トラブル増加。幼児退行して依存度が高まる。異常な固執。
失語症 言葉が出てこない。いい間違いが異常に増えたり、聞いた内容がわからなかったりする。
失行症 手指にも記憶にも問題がないのに、字を書いたり、食事をしたりといった簡単な動作ができなくなる。
失認症 五感や記憶に問題がないのに、見たもの、聞いたもの、触ったものが何かわからなくなる。

 

脳に損傷がなくても上記のような症状が出ることはありますが、それは「非器質性精神障害」と言って別の分類になります。

 

高次脳機能障害の障害認定確立

失語、失認、失行などは、身体麻痺とともに昔から障害として認められていました。

 

しかし、脳の損傷から起こる障害はそれだけか?

 

一見全快に見えるが、脳の高度な機能が阻害されて、事故前と同じ職業生活・社会生活を送れなくなっている人がおおぜいいるのではないか?

 

そういう人は何の補償も受けられず、苦しんでいるのではないか?

 

そうした問題意識から2000年代に器質性脳障害の認定基準が見直されました。

 

高次脳機能障害の定義が現在のように拡張され、以前は無視されていた障害を持った人も救済されるようになりました。

 

自賠責における認定システム

下記の表は、自賠責の高次脳機能障害認定確立検討委員会が作成したものです。

 

「補足的な考え方」は「障害認定基準」を高次脳機能障害に当てはめた時、どんな状態が該当するのかという例示です。

 

等級付けの基本的な考え方がこれでわかります。

 

後遺障害等級の認定基準
等級障害認定基準補足的な考え方
 1級1号  神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの  身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの
 2級1号  神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの  著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、一人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの
 3級3号  神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの  自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また、声掛けや介助なしでも日常の動作を行える。しかし、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労がまったくできないか、困難なもの
 5級2号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの
 7級4号  神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの  一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業ができないもの
 9級10号  神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの  一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの

 

自賠責保険の審査会の判断

平成13年から高次脳機能障害が疑われる症例は、特定事案として高次脳機能障害審査会で判断するルールになっています。

 

対象になる症例は、まず診断書で高次脳機能障害を示唆する症状の残存があるもの。

 

それ以外でも、高次脳機能障害なのに見落としている可能性がある症例は審査されます。

 

例えば残存はなくても治療の経過で、高次脳機能障害に関連する損傷や症状がみられた人などです。

 

認定のポイント

次の2段階に分けて検討されます。

 

  1. 事故による脳損傷の有無
  2. 障害の内容・程度の判断

 

高次脳機能障害は脳損傷を原因とするものです。。

 

脳損傷を伴わない場合は「非器質性精神障害」になり、等級も低く、損害補償額も大きく下がります。

 

どちらかよくわからない場合もあるのですが、定義により、脳損傷の存在を立証しないと、高次脳機能障害とは認められないのです。

 

脳外傷の有無の判断材料

判断は次の2点を主たる材料として行われます。

 

  1. 意識障害の状況
  2. 画像所見

 

まず、受傷後6時間以上続く意識障害があった場合、高次脳機能障害が永続することが多いのが統計でわかっています。

 

よって長時間の意識不明・混濁があった場合、脳損傷はあったと推定する重要材料になります。

 

次が画像で損傷が確認できるかです。

 

事故直後の画像に異常はなくとも、受傷後3カ月以内に完成する脳室拡大・びまん性脳萎縮は重要な証拠になります。

 

いろいろな検査方法がありますが、信頼されているのはCT、MRIの2つです。

 

PET、SPECT、DTIなどは技術的に信頼性が確立されていないとして、器質性障害の証拠として提出しても却下されることが多いです。

 

さて、現在の検査技術には限界があるので、画像所見がないから即座に脳損傷がないという結論にはなりません。

 

意識障害はそこを補う判断材料になっているわけです。

 

しかし、画像所見もない、意識障害もないとなると、高次脳機能障害を主張してもなかなか認めてもらえないということになります。

 

MTBIについて

今述べたことに関連することで、MTBIについて補足します。

 

MTBIは脳震盪症候群と訳され、脳震盪あるいはそれよりやや強い脳への衝撃で生じる症状です。

 

意識障害も画像所見もない患者にこの診断名が下されることがあります。

 

MTBIで脳損傷が発生して高次脳機能障害になることは、絶対ないとは言えない。

 

しかし、この主張は簡単には通らないと考えてください。

 

障害の内容・程度の判断

まず、主治医の意見書と家族からの報告書が判断材料になります。

 

それから複数の知能検査や神経学的検査が行われます。

 

主要な検査一覧
主な神経心理学的検査 WAIS-III(最も一般的)、MMSE、長谷川式知能評価スケール、RCPM
言語機能検査 標準失語症検査(SLTA)、WAB失語症検査、トークンテスト
視空間認知の検査 標準高次視知覚検査(VPTA)
行為に関する検査 標準高次動作性検査、Kohs立方体組み合わせテスト
記憶に関する検査 WMS-R、三宅式記銘検査、Benton視覚記銘検査、Reyの言語性および視覚性記銘検査、リバーミード行動記憶検査(RBMT)
前頭葉機能の検査 WCST、語想起テスト、かなひろいテスト、BADS(遂行機能障害症候群の行動評価)

 

認定上の争点になりやすい問題

 

発症の遅発で因果関係が問われる

いったん寛解して、時が経ってから高次脳機能障害のような症状が出た場合、因果関係が認められにくい。

 

それはもともと持っていた脆弱性や加齢のせいではないか、少なくとも事故が原因という証拠はない、という考え方になりやすいです。

 

もちろん症状が遅発した理由が医学的に説明できれば、この限りではありません。

 

意識障害の有無で脳損傷の存在が問われる

高次脳機能障害を訴える被害者に明確な画像所見がない時は、意識障害の有無が決め手になることが多いです。

 

意識障害がなければ、だいたい非器質性精神障害とされるます。

 

MTBIについてはこれが話題になり始めた初期は、明確な画像所見なしに高次脳機能障害を認めた判例が出たが、その後は認められた例は少ないです。

 

しかし、場合によっては「意識障害がなかった」という記録が不確かなこともあります。

 

他の部位の手術などが大変で、意識混濁や断続的な意識喪失が発生していたのに、医師は気づかなかったということもありえます。

 

「できること」で障害のレベルが問われる

「IQが正常だから」「パソコンを使っているから」「一人で電車に乗っていたから」といった「できること」をもって「そこまで障害はひどくないはずだ」と主張されることがあります。

 

被害者を尾行・隠し撮りしたビデオを証拠として提出してくることも。

 

しかし、単純な「できること」がたくさんあっても、それを組み合わせた複雑なことができない場合があるのが高次脳機能障害。

 

電話もメールも表計算ソフトもできるけど、仕事をやらせたら段取りがめちゃくちゃ、とか。

 

相手の主論理に飲み込まれず、しっかりこの点を主張しましょう。

 

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