一般臓器と生殖器の障害
胸腹部臓器の後遺障害についてまとめました。
- 胸腹部臓器の基礎知識
- 胸腹部臓器に関する後遺障害等級表
- 検査と等級認定ルール
- 認定上の争点になりやすい問題
胸腹部臓器の基礎知識
交通事故の裁判では、医学的な問題が法学的な問題・事故の物理的な問題とミックスで議論されます。
胸腹部臓器の障害であれば、各臓器に関する知識などが前提とされます。
ここでも簡単に押さえておきましょう。
【胸腹部臓器】
胸腹部臓器は、大きく次の5種類に分類されています。
呼吸器 | 肺、気管 |
---|---|
循環器 | 心臓、血管 |
腹部臓器 | 食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆のう、膵臓、脾臓 |
泌尿器 | 腎臓、尿管、膀胱、尿道 |
生殖器 | 睾丸、陰茎(男性) 卵巣、子宮、膣(女性) |
胸腹部臓器に関する後遺障害等級表
等級 | 一般的な臓器障害 | 生殖器の障害 |
---|---|---|
1級 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | |
2級 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | |
3級 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | |
5級 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | |
7級 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 両側の睾丸を失ったもの |
9級 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 生殖器に著しい障害を残すもの |
11級 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの | |
13級 | 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの |
検査と等級認定ルール
臓器の種類別に定量的な等級認定ルールが設定されています。
呼吸器
- 動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧
- スパイロメトリーの結果および呼吸困難の程度
- 運動負荷試験
上記3種の検査結果で等級認定されますが、詳細は割愛します。
循環器
- 心機能低下のMETs値
- 除細動器またはペースメーカーの埋め込み
- 心臓の弁の置換
- 大動脈解離の有無
上記4条件の組み合わせで認定されますが、詳細は割愛します。
腹部臓器
食道狭窄、人工肛門造設、腸狭窄、用手摘便を要するほどの便秘、おむつが必要な便失禁、肝炎・肝硬変、胆のうや脾臓の亡失などが等級認定されます。
各部位に詳細な規定がありますが、割愛します。
泌尿器
腎臓については、1側の腎臓亡失の有無でまず分け、糸球体濾過値(GFR)を参照して等級認定します。
尿管・膀胱・尿道の障害については、尿路変向術・排尿障害・畜尿障害の状態に応じて、5~14級が認定されます。
詳細は割愛します。
生殖器
両側の睾丸/卵巣を失った場合が7級。
陰茎を挿入できない(男)、させられない(女)状態が9級。
…という具合に状態別に認定基準が定められていますが、詳細は割愛します。
認定上の争点になりやすい問題
意外にも裁判で争点になることは少ないそうです。
認定には他覚的な器質的所見が必要です。
例えば、排尿障害や勃起不全があっても、泌尿器・性器に器質的変化がなければ神経症状として扱われます。