異なる系列で複数の障害がある場合
手と足、目と首など、異なる系列に複数の後遺障害がある場合の等級決定ルールが「併合」です。
併合について具体的に例を挙げながら、説明します。
併合の基本ルール
- 5級以上の等級に該当する後遺障害が2つ以上ある場合には、重い方の等級を3級繰り上げる。
- 8級以上の等級に該当する後遺障害が2つ以上ある場合には、重い方の等級を2級繰り上げる。
- 13級以上の等級に該当する後遺障害が2つ以上ある場合には、重い方の等級を1級繰り上げる。
- 前記1.-3.以外の場合には、一番重い後遺障害の該当する等級を、2つ以上ある後遺障害の等級とする。
例1
右肘関節の機能障害が12級6号に該当。
さらに上肢の露出面に手のひらの大きさの醜い痕が残り、14級4号が認定された。
この場合、第4のルールが適用されて、最終的な等級は12等級となります。
併合で繰り上げがあるのは13級以上の障害が複数ある場合なのです。
14級の後遺障害を複数負ったら大変だと思いますが、それはいくつあっても等級繰り上げにはつながらないのです。
例2
一眼の視力が0.1以下になって10級1号。
右手の小指を失って12級9号。
この場合は第三のルールが適用され、重い方の10級がひとつ繰り上がって併合9級となります。
併合ルールの例外
併合の4ルールだけならさほど難しくはないですが、実際には様々な例外があります。
例1
右上肢の手首切断、左上肢の肘から先を切断の場合。
まず、上肢の系列の序列は次のようになっています。
等級の序列 |
障害の内容 |
---|---|
1級3号 |
両上肢を肘関節以上で失ったもの。 |
2級3号 |
両上肢を手関節以上で失ったもの。 |
4級4号 |
1上肢を肘関節以上で失ったもの。 |
5級4号 |
1上肢を手関節以上で失ったもの。 |
まず、左腕は5級4号、右腕は4級4号が該当します。
ともに5級以上の障害なので、併合の一番目のルールを適用すれば、4級を3つ繰り上げて併合1級となるはずです。
しかし上肢の系列には1級3号「両上肢を肘関節以上で失ったもの」がすでにあります。
当該の障害はこの定義に合うかというと、これよりは軽いです。
よって両上肢の障害は併合ではなく、等級表に定められている両上肢の障害等級で決めます。
正解は2級となります。
これは「組み合わせ等級」と呼ばれるものです。
併合の例外の類型
「組み合わせ等級」のほかにも下記のような併合の例外があります。
要介護の等級 | 併合の適用は、介護の必要がない1~14等級のみ。要介護1級と要介護2級は適用外。 |
---|---|
序列の優先 | 併合のルールで等級を繰り上げると序列を乱す結果になる場合、序列が優先される。直近上位、または直近下位で序列を乱さない等級が選ばれる。 |
組み合わせ等級 | 上の右上肢と左上肢の例のように、等級表に定められた組み合わせの等級定義による場合。 |
派生症状 | 例えば足に偽関節が残り、知覚異常や疼痛がある場合、後者は前者の派生症状という扱いになり、それらの中で一番重い等級が採用される。 |
弁護士への相談のすすめ
このように併合は複雑で、素人が少々勉強してもいいくるめられてしまいます。
保険屋さんも過失で間違う可能性があるし、さらに言えば故意に間違えてくる可能性もあります。
そのまま通過すれば保険金は大幅に節約できます。
指摘されれば「すみません。間違いました。」と謝ればいいだけです。
併合が問題になるということはとても重い後遺障害です.
少しでも多く損害賠償を受けておかないと、残りの人生が悲惨なものになります。
等級認定は、細部まで正確にわかる弁護士に助けてもらう方が絶対安心です。