眼球とまぶたに関する後遺障害
眼球の後遺障害についてまとめました。
- 眼球の構造の基礎知識
- 眼に関する後遺障害等級表
- 用語の定義と等級認定ルール
- 認定上の争点になりやすい問題
- 眼の検査一覧
眼球の構造の基礎知識
交通事故の裁判では、医学的な問題が法学的な問題・事故の物理的な問題とミックスで議論されます。
眼の障害であれば、眼球の構造や脳と目の関係の知識などが前提とされます。
ここでも簡単に押さえておきましょう。
【眼球の構造】
角膜、瞳孔を通過した光が、レンズの役割を果たす水晶体によって屈折し、網膜の上に像を結びます。
この情報が視神経を通って脳に伝達され、物を見ることができます。
眼球は4つの直筋(上直筋、下直筋、内側直筋、外側直筋)と2つの斜筋(上斜筋、下斜筋)からなる外眼筋によって動かされます。
眼球は保護のためにまぶたで覆われ、まぶたは上眼瞼挙筋によって開閉されます。
眼球の保護と清掃のために涙を出す涙腺があり、涙は鼻孔に排出されます。
眼に関する後遺障害等級表
眼球
種別 | 障害の程度 | 等級 |
---|---|---|
視力障害 | 両眼が失明したもの | 第1級1号 |
1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの | 第2級1号 | |
両眼の視力が0.02以下になったもの | 第2級2号 | |
1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの | 第3級1号 | |
両眼の視力が0.06以下になったもの | 第4級1号 | |
1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの | 第5級1号 | |
両眼の視力が0.1以下になったもの | 第6級1号 | |
1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの | 第7級1号 | |
1眼が失明し、または一眼の視力が0.02以下になったもの | 第8級1号 | |
両眼の視力が0.6以下になったもの | 第9級1号 | |
一眼の視力が0.06以下になったもの | 第9級2号 | |
一眼の視力が0.1以下になったもの | 第10級1号 | |
一眼の視力が0.6以下になったもの | 第10級2号 | |
調節機能障害 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの | 第11級1号 |
1眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの | 第12級1号 | |
運動障害 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの | 第10級2号 |
両眼の眼球に著しい運動障害を残すもの | 第11級1号 | |
1眼の眼球に著しい運動障害を残すもの | 第12級1号 | |
正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの | 第13級2号 | |
視野障害 | 両眼に半盲症、視野狭窄または視野変状を残すもの | 第9級3号 |
1眼に半盲症、視野狭窄または視野変状を残すもの | 第13級2号 |
まぶた
種別 | 障害の程度 | 等級 |
---|---|---|
欠損障害 | 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | 第9級4号 |
1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | 第11級3号 | |
両眼のまぶたの一部に欠損を残しまたはまつげはげを残すもの | 第13級4号 | |
1眼のまぶたの一部に欠損を残しまたはまつげはげを残すもの | 第14級1号 | |
運動障害 | 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの | 第11級2号 |
1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの | 第12級2号 |
用語の定義と等級認定ルール
視力
視力とは2点を識別する眼の能力をいい、万国式試視力表を用いた視力検査で測定します。
万国式試視力表は複数種類ありますが、「C」の形の図形の開いている方向を答える、ランドルト環の検査が一般的です。
注意すべきは裸眼視力ではなく、眼鏡・コンタクトをつけた矯正視力が基準だということです。
失明
眼球を摘出したものや明暗が全く分からないものはもちろん失明です。
さらに光覚弁(明暗がわかる)と手動弁(目の前で手を動かすと方向がわかる)も失明に含まれます。
両眼の障害
等級表の中に両眼の場合が定義されているので、その等級を採用します。
複数部位の障害は個々に等級付けして併合繰り上げする場合がありますが、両眼の場合には適用されません。
ただし、両眼が該当する等級より上の等級に該当する障害が1眼にある場合、後者の等級を採用します。
調節機能障害
簡単に言うとピントを合わせる能力で、測定にはジオプトリ―という数値尺度が使われます。
「著しい調節機能障害」とは、ジオプトリ―値が「通常」の半分以下である場合を指します。
「通常」とは、片目が無傷ならそれが基準、両目を受傷している場合は、規定の年齢別数値表とします。
運動機能障害
まず目玉を動かす機能が正常でない場合を指します。
注視野とは、頭を動かさずに眼を動かして直視できる範囲を指しますが、これが大幅に減少した場合が含まれます。
ほかには、モノがダブって見える「複視」もここに入ります。
視野障害
視野が狭くなったり、欠けたりすることで、「半盲症」「視野狭窄」「視野変状」の3種類があります。
「半盲症」は、それぞれの目は見えるのに、両眼の視野の右半分、または左半分などが見えないもの。
「視野狭窄」は、正常視野の60%以下の狭い範囲しか見えないもの。
「視野変状」は上の2つ以外の視野障害、例えば「暗点」を指します。
「暗点」とは、視野の中で特定の狭い部分が見えないことです。
外傷性散瞳
明るさに応じた瞳孔の調節ができなくなって、普通の状態でまぶしさを感じるものです。
症状の重さに応じて11~14等級で格付けされます。
流涙
涙の量が過剰になり、絶えず泣いているような状態になることです。
症状の程度に応じて、12~14等級が認定されます。
まぶたの障害
欠損とは、まぶたが足りなくて眼が閉じきれない状態。
運動障害とは、開閉がうまく行かず、開き切らなかったり、ずっと閉じきらずに眼球が露出している状態になることです。
まつげはげ
普通、まつげが生えている範囲の半分以上でまつげがない状態を言います。
認定上の争点になりやすい問題
視力障害等の原因が本当に事故かどうかという因果関係が問題になりやすい。
特に事故から時間が経ってから発症した場合や、典型的でない症状の出方の場合。
うつ等の心因性ではないのか、とかも相手はよく主張してきます。
損害賠償の対象は器質性の障害であって、心因性と認められると少なくとも大幅な減額になるからです。
あと、もともと持っていた既往症や体質などのせいで普通の人以上に悪くなったと主張してくることもあります。
普通の人を基準に上限を置くべきだとして、減額を要求してきます。
これは「素因減額」といいます。
こうしたことに対応できる弁護士を選ぶことが大切です。
眼の検査一覧
より高い等級認定を受けるためには、検査の事をよく知って、障害を立証していくことも大切です。
これは被害者が自分でやるのは難しく、弁護士が医師を巻きこんで進めてくれるのを期待したいところです。
しかし、被害者も検査名を聞いたことがあるという程度の勉強はしておいた方がよいでしょう。
その趣旨で検査名の一覧を収録します。
視力検査 |
自覚的視力検査
他覚的視力検査(心因性視力障害・詐病検査)
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調節機能検査 |
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視野検査 |
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眼振検査 |
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眼位・眼球運動検査 |
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眼底検査 |
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電気生理学的検査 |
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瞳孔検査 |
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